住宅ローンの基礎知識

住宅ローンは、家を購入するほとんどの人にとって「人生で最も大きな借入れ」です。特に初めて検討する方は、「金利が安い銀行を選べばいいのかな?」と考えがちですが、実際には金利の種類・付帯する保障・諸費用を含めた総返済額をバランスよく見ることが重要です。

愛知県には地元密着の地銀から全国規模の大手銀行、さらにネット銀行までさまざまな選択肢があります。本記事では「何から見ればいいのか分からない」という初心者の方に向けて、選び方の軸を整理し、具体的な金利比較・保障の考え方・シミュレーション例を紹介します。

住宅ローン選びで大事な3つの視点

住宅ローンを選ぶときは、次の3つを押さえると失敗を防ぎやすくなります。

  • 金利タイプ
     変動か固定かで、将来の返済額の安定性が大きく変わります。
  • 付帯保障(団信・疾病保障など)
     死亡や高度障害だけでなく、がん・生活習慣病・長期入院などにも備えられるかどうかが大切です。
  • 総返済額
     金利だけでなく、保証料や事務手数料の方式によって総負担は数十万円単位で変わります。

※ 初めての人ほど「金利が安いから選ぶ」という失敗をしがちです。3つの視点を意識すると、判断基準がクリアになります。

金利タイプの基本と違い

変動金利

特徴

  • 当初の金利は低く、月々の返済額を抑えやすい
  • 半年ごとに金利が見直され、将来的に返済額が増えるリスクがある
  • 「5年ルール」で返済額は急変しにくいが、総返済額は増える可能性がある

こんな人におすすめ

変動金利は、共働きで収入に余裕があり、万一返済額が上がっても対応できる家庭に向いています。繰上返済を積極的に計画できる人や、金利動向を自分でチェックして柔軟に対応できる人にとって、有力な選択肢です。短期的な安さが魅力ですが、リスク管理に自信のある人向けの金利タイプです。

固定金利

特徴

  • 借入時の金利が最後まで変わらず、返済額が一定
  • 将来の金利上昇に左右されず、長期的に安心
  • その分、当初金利は高めに設定されている

こんな人におすすめ

固定金利は、子育て世帯など支出が多く家計の安定を優先したい人に向いています。返済比率が高く、金利上昇のリスクを負担できない場合にも安心です。長期にわたって同じ額で返済計画を立てたい人にとって、最も分かりやすく安心感のある選択肢といえます。「保険料を払ってでも安心を確保したい」人におすすめできる金利タイプです。

固定特約型(ミックス型)

特徴

  • 最初の10年など一定期間は固定、その後変動に移行
  • 「当初の安心感」と「低金利のメリット」を両立できる
  • 固定終了後の金利水準によっては返済額が大きく変わる

こんな人におすすめ

固定特約型は、10年以内に教育費のピークや転居など大きなライフイベントを予定している人に適しています。当初は返済を安定させたい一方で、将来的には低金利の恩恵を受けたいと考える人にとって、バランスの良い選択です。「安心と低金利の両方を取りたい」人に向いた折衷型の金利タイプです。

金利と保障のバランスをどう見る?

住宅ローンには「団体信用生命保険(団信)」がセットになるのが一般的です。最近では保障が多様化しており、選ぶ保障によって金利が0.1〜0.3%程度変わることもあります。

  • 一般団信:死亡・高度障害で残債ゼロ(標準付帯)
  • がん団信:がん診断で返済免除、+0.1〜0.2%程度
  • 全疾病保障:長期就業不能で残債ゼロ、ネット銀行では無料付帯の例も

※「どの保障が自分の家庭に必要か」を考えると、多少の金利上乗せも納得感を持って選べます。

返済シミュレーション例

  • 借入:3,000万円
  • 返済期間:35年
金利タイプ金利月々の返済額総返済額
変動金利(地銀)0.875%約8.0万円約3,373万円
固定金利(地銀)2.0%約9.9万円約4,175万円

月々で約1.2万円、総額で約500万円の差があります。この差は子どもの教育費や老後の資金に充てられるほど大きな金額です。単に安さで選ぶのではなく、安心料を払う感覚で比較することが大切です。

返済シミュレーション例

前提条件:借入3,000万円/期間35年/年収500万円/一般住宅(省エネ基準適合)

変動金利 × 住宅ローン減税(実効控除額 約160万円想定)

想定金利月々返済額総返済額減税後実質総返済額(控除160万円想定)
0.875%(現状)約8.3万円約3,484万円約3,324万円
+0.5%(1.375%)約9.0万円約3,781万円約3,621万円
+1.0%(1.875%)約9.7万円約4,094万円約3,934万円
  • 金利が0.5%上がるだけで、月々で約7,000円、年間では約8〜9万円、総返済額は約300万円増
  • 「金利上昇が始まる前に契約」することが、もっとも実質負担を抑える方法
  • 減税で約160万円軽減されても、1.0%上昇時にはそれを上回る負担増

固定金利 2.0% × 住宅ローン減税(実効控除額 約150万円想定)

想定金利月々返済額総返済額減税後実質総返済額(控除150万円想定)
2.000%(全期間固定)約9.9万円約4,174万円約4,024万円
  • 全期間の返済額が一定のため、金利上昇リスクはゼロ
  • 「安心を買うコスト」として、変動より+約700万円の差が出る構造

※実効控除額→同じ借入条件でも、金利タイプによって「利息の割合」や「税負担の上限」が変わるため、実際に受けられる控除額(実効控除額)には差が生じます。

住宅ローン減税制度の概要(2021〜2025年度)

借入時期控除率控除期間最大控除額対象住宅のポイント
〜2021年1.0%10年最大400万円旧制度(すべての住宅が対象)
2022〜2023年0.7%13年最大455万円一般住宅も対象(省エネ基準未達も可)
2024〜2025年0.7%13年最大520万円省エネ基準適合住宅以上のみ対象(非省エネ住宅は対象外)
2026年以降(予定)制度見直し予定(縮小見込み)

「一般住宅(年間控除上限40万円)」とは、省エネ基準を満たした住宅を指します。
最大520万円は、省エネ基準適合住宅(借入上限4,000万円)の場合の上限額を示します。
ここで注意が必要なのは、「一般住宅」という言葉の定義が2023年までと2024年以降で異なります。

  • 〜2023年入居分の『一般住宅』:省エネ基準を満たしていない住宅も対象(旧制度)
  • 2024年以降の『一般住宅』:省エネ基準を満たした住宅(=省エネ基準適合住宅)のみ対象

2024年以降は、省エネ基準を満たさない住宅は減税の対象外となっています。一般的なハウスメーカー・工務店で建てる新築住宅は、すでにほとんどがこの基準を満たしています。
よって、一般的な新築住宅であれば最大520万円の控除枠(0.7%×13年)が適用されます。

住宅性能区分ごとの借入上限と最大控除額

住宅区分借入限度額(2024〜2025年入居)年間控除上限額最大控除額(13年)
長期優良住宅・低炭素住宅5,000万円(子育て・若者夫婦世帯)/4,500万円(一般世帯)50万円最大650万円
ZEH水準省エネ住宅4,500万円(子育て・若者夫婦世帯)/4,000万円(一般世帯)45万円最大585万円
省エネ基準適合住宅(いわゆる一般住宅)4,000万円(子育て・若者夫婦世帯)/3,000万円(一般世帯)40万円最大520万円
非省エネ住宅(その他の住宅)対象外

※いずれの区分も、控除率0.7%・控除期間13年が共通です。

住宅ローンは、「金利」と「減税」の二つが重なる今が、最も家計に優しいタイミングです。
仮に金利が1%上がるだけで、総返済額は600万円以上の差。減税を最大限活かしても、その差を取り戻すことはできません。一方で、現在の変動金利(0.875%前後)や固定1〜2%台は、過去30年で最も低い水準。住宅ローン減税(最大13年間)もまだ適用可能です。
「同じ家でも、借りるタイミングで数百万円の差が出る」――

住宅AIコンシェルジュでは、愛知県内の主要銀行の金利比較や減税適用額の目安もわかりやすく整理しています。今の条件でどれくらい変わるのか、早めに確認しておくことが、将来の安心につながります。まずは、“今の金利で”試算してみることから始めてみましょう。

各銀行の特徴とおすすめポイント

名古屋銀行

特徴

  • 地域密着で相談体制が手厚い
  • 建築段階でのつなぎ融資に対応
  • 団信はシンプルな一般型が中心
  • 優遇条件(給与振込やカード契約など)で金利引き下げ可能

こんな人におすすめ

初めて住宅ローンを組む方や、担当者と直接やり取りしながら安心して進めたい人に向いています。多少金利が高めでも「相談体制の手厚さ」を重視する人におすすめです。

総評

金利よりも安心感を優先したい人に最適。

公式:https://www.meigin.com/

十六銀行

特徴

  • 団信のラインナップが豊富(がん団信・全疾病など)
  • 地域提携が多く住宅会社との連携に強い
  • 変動金利はやや高め
  • 優遇条件は細かく事前確認が必須

こんな人におすすめ

「保障を手厚くしたい」という人におすすめです。がんや生活習慣病などへの備えを優先したい人には特に安心感があります。

総評

金利よりも保障を厚くしたい人に選ばれる銀行です。

公式:https://www.juroku.co.jp/

あいち銀行

特徴

  • 愛知銀行と中京銀行が合併して誕生
  • キャンペーン時には金利・諸費用で優遇あり
  • 団信は基本型が中心、オプション追加可能
  • 地域の不動産会社・工務店との連携が厚い

こんな人におすすめ

「金利を抑えたいが、タイミングも重視したい」という人におすすめです。通常は平均的ですが、キャンペーンを活用すればネット銀行や大手並みの条件も狙えます。

総評

キャンペーン時を狙って借りれば、金利面で非常に有利な選択肢になります。

公式:https://www.aichibank.co.jp/

大垣共立銀行

特徴

  • 岐阜〜愛知北エリアに店舗網が広い
  • 金利水準は平均的
  • 保証料方式・事務手数料方式を選択可能
  • 団信は一般型が中心

こんな人におすすめ

「サポート体制や相談のしやすさを重視したい」という人に向いています。費用体系を柔軟に選べるため、ライフプランに合わせた最適なシミュレーションが可能です。

総評

相談体制と費用体系の選択肢を兼ね備えた、安心感を重視する人に適した銀行です。

公式:https://www.okb.co.jp/

目的別に選ぶならこの銀行

とにかく金利を抑えたい人におすすめ

  • ネット銀行(住信SBIネット銀行・auじぶん銀行など)は、変動金利で0.2%台という超低金利を実現できるケースがある。さらに全疾病保障が無料付帯する場合もあり、コスト面での優位性は非常に高い。
  • 地銀では、あいち銀行がキャンペーンを活用すると有利な条件を得られることもあり、コスト重視派におすすめ。

保障を充実させたい人におすすめ

  • 十六銀行は、がん団信や全疾病保障など団信ラインナップが豊富で、保障の厚さを優先する人に最適。多少の金利上乗せがあっても「安心をお金で買う」という考え方にマッチ!
  • ネット銀行でも疾病保障が標準付帯するケースがあり、保障を重視したい人には候補となる。

相談や安心感を重視したい人におすすめ

  • 名古屋銀行大垣共立銀行は、地域密着で店舗相談がしやすく、建築段階からのつなぎ融資にも柔軟に対応。
  • 「住宅ローンは初めてで不安が多い」「担当者と直接話しながら進めたい」という人に最も安心感のある選択肢。

まとめ|住宅ローンは「安心とバランス」で選ぼう

住宅ローンは金利の安さだけで決めるものではありません。将来の安心感や保障の内容、諸費用を含めた総返済額まで考慮することが大切です。地銀には相談体制や地域提携の強みがあり、大手やネット銀行には金利や付帯保障の魅力があります。自分のライフスタイルに合ったバランスを見つけることこそが、後悔のない選び方につながります。